043458 ランダム
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めらんこりっくすかいじゅーす。

めらんこりっくすかいじゅーす。

何処かへ

※ちょいグロとか苦手な人は読むのをやめましょう。一応12禁。
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人類は5098年2月19日に戦争で滅んだ。

戦争の原因は「人の心を操ってみたい」と言い出した愚かな大富豪のせい。

そのわがままに答えるべくして完成したエモーションシステム。
人間の感情を全て兼ね備えた最高の人造人間。
だが急いでつくったものだったから、ものの数ヶ月で故障し、
壊れた機械の体からはありとあらゆる感情が放出されて、
当時の人間の中に最も多い感情、憎しみ。

世界中に「憎しみの霧」をまきちらせた。


そして戦争が起こった。

その日、3人の子供が生まれた。

進んだ時代のおかげで子供達は成長できた。
人造人間に育てられ。

そんな3人の中の1人が街に出てみた時、思うことがある。

私は人造人間ではないんだ。
この銀色ではない肌、体温、どれを見ても違う種。
本で調べてみたがどうやら「ヒト」というものらしい。

・・・同じヒトはいないのか。

その小さな好奇心を過大させ、車を走らせた。

この時代、免許なんてない。
車だって、飛行機だって新幹線だって運転できるならそれだけでいい。

事故にあって死ぬ「ヒト」なんていないから。

無心に車を走らせて、休憩しようと止めたそこは大阪だった。
大通りまで歩いた。

5098年で止まってしまった世界。
進歩のない世界。

人造人間たちの歩く音とネオンの点滅しかない。
そんな空間を1人さまよっていた。

後方からエンジンの音がする。


バイクだ。

乗っているのはロングヘアーの


















ヒト?

「待って!待って!あなたヒトなの?」
初めて聞いた自分の声。
話し相手なんていなかったから聞いた事なんてなかった。
必死になり、あせるという感情はこういうものなのか、と自分を客観視していた。
バイクは急ブレーキをかけて止まった。
ヘルメットをはずしてスタンドを立ててこちらに向かってくる。

どうやら待ち望んでいた同じ種らしい。

「・・・初めまして。」
どちらからともなくいう。
「名前は?」
バイクの女がいう。
「名前・・・?」

ナマエってなんだろー・・・。

そんな考えを知ってか知らずか
「ヒトやモノには名前ってのがあるらしいんだ。私はじいさんから秋ってつけられた。」

「季節の?」

「そうだよ。あんたえーっと、やっぱ名前がないと呼びにくいわ。」
ちょっと考えてアキはこういった。
「じゃあんたのこと今からナツって呼ぶわ。同じ季節名でなかなかいいでしょ。よろしくねナツ。」
「・・・どうも。」

自分勝手というか、よく言えば、決断力があるというのか。
「ナツ。」

「はい。」

「なんでもない。」

「・・・。」


「ナツ。」

「はい?」

「コレ見て。」

手渡されたのは手書きの分厚い本だった。
「これウチのじいさんが残した本でさ。」

表紙を開ける。濃い赤で花の刺繍の入った立派な装丁だった。

「どうやら世界中の人間が滅びたらしいんだ。」
「え?」
「戦争ってのがあってさ。」
「・・・・。」疑問点はそこではないが黙って聞いていた。
「これを読むまで私は自分のことを人造人間だと思っていた。」
「そうなんだ。」
「あんた、分かってたの?」
「人造人間ではないとは思ってた。」

さっき渡された分厚い本を読む。
題名は「歴史」

5088年から書いてある。
今は5120年・・・・・・・・・・たったの32年前。
パラパラとページをめくっていく。

ふと目につく変なページがあった。
水で濡れて乾いた後のように紙が波うっている。
しかもそのページだけ真紅で。

「これは、血?」
「そう、血文字。」
全体的に紅いので良く分からないが、少し目を本から遠ざけてみると
「争い」と読める。
日付は5098年2月19日。

「・・・・この日付は・・・・」
5098年2月19日のページをたたく。

「そう私「たち」の誕生日。」
「・・・なんで。」

アキは震える手でそっと、次のページを開いてナツの目の前に出した。
「読んで。」

あきらかに健康的ではない色をしていたアキの表情からただならぬものを感じ取った。
目を本に移す。

『秋へ。
お前にこの名前をつけたのはな、この恐ろしい戦争が起きている冬。(今だな。)
それを1つ前の季節の秋に戻ってくい止められればお前と生き、幸せな日々が送れただろうと思ってつけたんだ。
でもそれは不可能で、もうこれ以上進めぬ所まで人類は来てしまった。

平和だった日本もこれで終わりかも知れない。
人々の心は金持ちの道楽で作られた機械で壊されてしまった。
これを書いているうちにわたしもおかしくなるかも知れない。

でも今日生まれた愛する孫、アキ、お前のためにもせめてこれだけは書き残したい。

この世界に生き残れるのはたったの3人だけ。

何故だかわからないがそうなっているらしい。
それも今日生まれる子供。
アキ、お前なんだ。
アキ、残りの2人を探せ。
アキ、3人で仲良く暮らすのが、
アキ、これがお前達3人の
アキ、使命だと私は
アキ、思うんだ。
アキ、お前の
アキ、顔を
アキ、ひ
アキ、とめでも
アキ、見たかった。
アキ、おまえなんて死ねばいいのに』

暖かい、アキの祖父からの最後の言葉は未来の私達のために書かれていた。
胸にジンときた。
それと同時に最後の行の性格の変わりように言いようの無い悲しみを感じた。
「そう、きっとそうなのだと私も思ってまずは国内から残りの2人を探そうと思った。」

ナツは考え始めた。
あともう一人はどこにいるのか。
それに3人で生きていくこと、それが何故大切なのか。
「考えるよりも、探しにいきましょう、もうひとりを。」
心が逸る。ナツがそういうと




















サガス ヒツヨウ ハ ナイ キット モウスグ アエル





















え?














「・・・・・・・はじめまして、こんにちは。運命の美しいお嬢さんたち。」

「美しいだなんてお世辞が上手だねぇ・・・」
アキが警戒しながら冷静に答える。

今いきなり目の前にヒトが現れた。
これで3人そろった。

「何もせずに3人そろっちゃったわ、ねぇ、これからどうするの。」
まだ警戒しているのか気づけばアキは刃物を向けている。

「まぁまぁ、アキ。僕達は生き残った唯一の人類として平和に共存しなければいけないのだから。」
振り向いてナツの顔を見る。
「ねぇ、ナツ。そう思うだろ?」



何でこのヒト、私がナツだって知ってるんだろう。

「どうして知ってるかって?それは僕にそういう力があるからさ。」



心を読まれた?

「嫌な力ね。」




何故かアキは冷たい。



「正確には透視能力と予知の能力があるんだ、生まれつき。」

またちらりとナツを見て


「そう、多かれ少なかれ誰にだって能力はある。例えばナツ。君にも透視する能力がある。」


「え?」


「ほら、僕の名前がわかるだろ?」

いきなりそういわれても・・・と言おうと思ったが
・・・なんだかわかる気がする。








「ハル。」





「正解。さすがだね。」
うきうきと名前を当てられただけではしゃぐこの人をみていたら
この国はまだ大丈夫なのではと思いはじめていた。
その時アキが言った。

「さぁ、全員が全員の名前を知ったことだしそろそろ始めないと。」
「何を?」






















「殺し合いをさ。」














この人たちは何をいいだすのだろう?

「何で?」
ナツはまったく理解できない。
「この世界に必要なのは3人の人間じゃない。」
ハルが答える。
重い口をあけていう。
「2人の男女なんだ。」
その言葉の意味をナツは知らない。人造人間に育てられたナツは男女の情事など知らずに育ったのだから。

アキは静かな目でこちらを見ている。



「まさか本当に殺し合いなんてしないよね?」
ナツは冗談でしょ、というようにアキに問う。
「あなたとあえて本当に嬉しかった。初めて聞いた自分の声、初めて見たヒト。」
遠いどこかうつろな目をして空を見上げながらしゃべり続けるアキ。

「ありがとう。」





最高の笑顔見せてバイクにまたがり猛スピードで走り出していった。

「アキ!?」
この子は一体何をしているのだろう。
何がしたいの?そう思ったとき
遠くから爆音が聞・こ・え・た。




ロングヘアーの美しいアキ。
笑顔が素敵なアキ。
敬語をつかわないくだけたアキ。
初めてあった人類。
そして私に名前を授けてくれたアキ。

「どちらかが死ななければいけない運命だったんだ。それを彼女も予知していた。」
男は言う。

「アダムとイヴを知っているか?」
じっと互いを見つめる。
「これから僕達は新しいアダムとイヴになるんだよ、ナツ。」

肩に置かれたハルの手が重くそしてとても暖かく感じた。

そう、そうなのだと私も思った。

だけど、これから起こることを私は予知して、目の前の男の首をアキのナイフで切・り・裂・い・た。


fin

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あとがき

中学時代のはこれ、ハッピーエンドなんですよ。
でも黒くしてみましたw


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